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観てきた!

気付いたら結構ギリギリになってた。
都内ではもう渋谷と銀座でしかやってなかったのを慌ててキャッチ。

面白かった,というか,興味深かった。本当に色々と。
こう,匂わす表現がすごく多くて,観ながら唸った。
そこここに,メタファが散りばめられていてというか潜ませてあって。


グルヌイユの働く香料の工房の女主人の
「花は優しく扱ってやらなきゃならない。若い女にするようにね。優しく,静かに死なせてやるんだよ」
というような(正確には違ってるかも)セリフとか,もうすげー意味深長で。
殺した女の体を優しく,丁寧に(まるで愛しているかのように!)
扱ったのだろうグルヌイユを容易に想起させるし。

最後の最後。
あの結末は,つまり口愛的な他者と同一化したいという欲求はプリミティブな愛着欲求の形で,
そうやって,グルヌイユは漸くそれを得たのだという表現(解釈)には,息を呑んだ。
内心「すげー!すっげーー!!」て大喝采だった。
流石ドイツ映画。フロイトさんの出身国。サイコアナリシス的な解釈で2度も3度も楽しめる作品。

そもそもこの作品の主題は「匂い」という象徴の周囲を存在と愛と死というキーワードが
くるくる循環しながら舞っているようなものだとワタシは理解したのだけれど。
存在するからその存在へと愛という引力が働き作用し合うのだろうし,
愛はどこかで死と同じ形をもつ。エロスとタナトス。

独りでぐるぐる,ずぶずぶ思考に沈み込んで。
繰り返し繰り返し反芻し咀嚼するのがとても楽しい。

あとは,兎に角グルヌイユ役のベン・ウィショーの存在感がすごかった。
この人,すごいねー…。
ほとんどセリフのない役だけど,それでも,グルヌイユはとても雄弁。
この人の目は正視できない。強すぎる。
ダスティン・ホフマンの
「ベン・ウィショーには,グルヌイユというキャラクターが持つ
 野性的で飼いならされていない気質がある」
という言葉が,正にぴったり。

物語後半,処刑台の上に立ち尽くし香りに魅せられる群衆をただただ見る彼の,表情。
悲しみとかそういうの通り越してたもん。絶望してた。
こんなに人はいて,それぞれ自らの欲求のままに人を求めるけれど,
でも,このグルヌイユという存在は,こんなにも独りで,孤独だ。
こんなに救い様のないシーンは終ぞ見たことがない。

映像美術もすっごく造り込まれてて大満足。
トレイラーの「18世紀,パリは悪臭と活気に満ちあふれていた」って文句が本当にぴったりで。
美しくて,豪奢で,とんでもなく不潔。
人物のね,肌とか汚いのよ。貴族のめかしこんでるような人ですら。
そうだよねーこの時代,こいつら肌キレーなハズねーもんなーって。うんうん頷いちゃう感じ。

裏読みが楽しいこの作品。
絶対何か意図があるんだろうな,何かの暗喩なんだろうな,と必死に考えるのだけど
自分的にどうもしっくりとこないものが一つだけ。

グルヌイユの後姿…その背中には常に他者の「死」が貼り付いているように
描かれているんだけど,これは何なんだろう。

自分を生んで,死産だろうと決め付けてその存在を認めようともせず捨てた母親は,
彼の産声によって結果的に絞首刑で死に(子捨ての罪で)。
彼を金目当てに引き取って育てていた孤児院の女は,
はした金で彼を売り払った直後にその金と命を奪われ。
はした金でグルヌイユを買った皮革職人の親方も彼を手放した直後に転落死,
調香の師匠(ダスティン・ホフマン)も100のレシピと引き換えに修行に出ることを許可し,
彼が旅立った朝に自宅兼店舗の建物が全て崩落し死亡。
修行先の工房でグルヌイユに辛く当たってた男もグルヌイユがパリへ戻ったら冤罪で処刑されたし。
そもそもグルヌイユ自身でパリでの最初の殺人を合わせると13人,殺してるし。

これは単に感覚的な考えなんだけど,13人の女の死はまた別物なんだろうと。
それ以外の,彼と少しだけすれ違った,肩を触れ合わせたように関わった人物の
この死って一体何を示したいんだろう。
気になるんだけど,はっきりしない。
…どーおもいます?(笑)

とりあえず,オフィシャルのベン・ウィショーのグルヌイユについての理解を読んで,
観終わった後に持った
「グルヌイユ,反応性愛着障害でしょ,で,自閉症スペクトラムのどっかには乗っかるよなぁ,この子のなァ」
はそんなに遠くない感想だったという思いを強くしました(苦笑)。
そんな感じ,しないー?>ベンのコメント

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